地中送電用電力ケーブルの損失とは?
~電気工事士がやさしく解説する見えないロスの正体~
▲ 地中送電用電力ケーブルの例
こんにちは、電気工事士のたかひろです😊
私たちが日々の暮らしで何気なく使っている「電気」。この電気は発電所から長い距離をかけて送られてきています。その中でも、街中で使われる地中送電用ケーブルは、地下に埋められて電気を運ぶ“縁の下の力持ち”のような存在です。
でも実は、この送電中には目に見えない「損失」=エネルギーの無駄が発生しています。今回はその仕組みを、図や実際の現場経験を交えて解説していきます!
🔧 地中送電とは何か?
地中送電の定義
「地中送電」とは、地下に埋設された電力ケーブルを使って電気を送る方法のことです。電柱や鉄塔を使った「架空送電」と対照的な方法で、都市部や再開発地域、高速道路の下などで多く採用されています。
地中送電のメリット
✅ 景観を損なわない(無電柱化)
✅ 台風・落雷などの自然災害に強い
✅ 事故や火災のリスクが比較的少ない

デメリット
❌ 初期施工費用が高い(掘削・埋設工事)
❌ 故障時の特定や修理が困難
❌ 地中熱の影響を受けやすい(放熱しにくい)
⚡ 地中送電における損失とは?
送電中の「損失」とは、本来届けられるはずの電力の一部がケーブル内で熱などに変換されてしまうことを指します。つまり、送った分の電気がそのまま使えるわけではなく、途中でロスしているのです。
📌 主な電力損失の種類
以下の4つが、地中送電ケーブルで発生する主な損失です:
| 損失の種類 | 主な原因 | 発生場所 |
|---|---|---|
| 導体損失(ジュール損) | 電流と抵抗 | 導体(金属線)内 |
| 誘電体損失 | 絶縁材料への電界負荷 | 絶縁層 |
| 渦電流損失 | シース部への誘導 | 金属シース |
| 誘導損失 | 他の回路・外部磁界からの影響 | ケーブル周辺・構造物内 |
1️⃣ 導体損失(ジュール損失)
▲ 電流と抵抗が生む熱
原因:
導体(一般的に銅またはアルミ)は抵抗を持っており、電流が流れると**熱(ジュール熱)**が発生します。
計算式:
P=I2×RP = I^2 \times RP=I2×R
PPP:損失電力(W)
III:電流(A)
RRR:導体の抵抗(Ω)
特徴:
電流の2乗に比例して損失が増加するため、大電流になるほど損失も大きくなる。
ケーブルが長くなるほど、抵抗も増えて損失が増える。
対策:
太い導体(低抵抗)を使用する
高電圧で送電し、同じ電力でも電流を減らす(=Iを小さく)

2️⃣ 誘電体損失
▲ 絶縁体内での熱損失
原因:
地中ケーブルは高電圧で運用されるため、絶縁体(誘電体)に電界がかかることで、内部で微小な電流が流れ、それが熱になる。
主な誘電体材料:
XLPE(架橋ポリエチレン)
オイル紙(古いケーブル)
EPR(エチレン・プロピレンゴム)
計算式(概略):
P=ω⋅C⋅V2⋅tanδP = \omega \cdot C \cdot V^2 \cdot \tan\deltaP=ω⋅C⋅V2⋅tanδ
ω\omegaω:角周波数(= 2πf)
CCC:静電容量
VVV:印加電圧
tanδ\tan\deltatanδ:誘電正接(材料の損失係数)
対策:
tanδ\tan\deltatanδ の小さい絶縁材料を使用する
絶縁材料の劣化を防ぐ(経年劣化で損失が増大)
3️⃣ 渦電流損失
原因:
ケーブルの**金属シース(銅テープや鉛シース)**に交番磁界が作用し、金属内に「渦電流」が発生。この電流が熱に変わる。
影響が大きいケース:
多心ケーブル(複数の導体が同心配置)
高電流が流れる場合
ケーブルが束ねて敷設されている場合
対策:
シースを絶縁して片側接地とする(循環電流を遮断)
ケーブルの配置を工夫して磁界の打ち消しを促す
4️⃣ 誘導損失
原因:
地中に埋設されている他の構造物(配管、他のケーブル)や電源線からの磁界の影響によって、誘導電流が流れる。
対策:
他の電路や金属管との距離を確保
遮蔽構造を用いる(シールド付きケーブルなど)
🛠 現場での実際の工夫と設計ポイント
私たちが地中ケーブルの施工や保守を行うとき、以下のような工夫をしています。
✅ ケーブルルート設計
ケーブル同士の間隔や曲げ半径を適切に設定
**発熱の少ないルート(通気性の高い地中)**を優先
✅ 放熱対策
放熱性の高いサーマルバックフィルを使用
通気管やコンクリートダクトによる冷却構造
✅ 損失モニタリング
赤外線カメラや温度センサで、異常加熱を早期検知
絶縁監視装置で誘電体劣化を定期的に点検
💡 地中送電ケーブルと高圧受電設備の関係
例えば、ビルや工場では地中ケーブルで**高圧受電設備(キュービクル)**まで電気が送られています。

▲ 地中ケーブルと高圧受電盤の接続例
この高圧受電盤でも、受電電流が大きくなればなるほど地中ケーブルの損失が増加し、温度上昇や絶縁劣化のリスクが高まります。
📊 数値で見る損失の大きさ
例:3.3kVの地中ケーブル(CVT38sq、長さ100m)を使って500kWの電力を送った場合…
電流:約87.5A
導体損失:約300W程度
誘電体・渦電流損失など含めると合計約400~500W程度のロスに
→ 送った電力の約0.1%が損失に!
距離が長くなると、この損失は無視できなくなります。
✍️ まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 地中送電 | 地下にケーブルを敷設して電力を供給する方式 |
| 損失の種類 | 導体損失、誘電体損失、渦電流損失、誘導損失 |
| 損失の対策 | 太い導体、高品質絶縁体、絶縁施工、放熱設計など |
| 現場の工夫 | 温度監視、絶縁監視、通気構造などで安全運用 |
👷♀️ 最後にひとこと
地中送電ケーブルは、普段私たちの目に見えないところで、毎日大量の電気を届けてくれています。ですが、その中で発生する損失をしっかり理解して抑える工夫をすることは、エネルギー効率や安全性の向上に欠かせません。
電気工事士として現場で働く私たちも、目に見えない損失を意識して、日々の作業を行っています😊

























